乳房結節によって動き続ける陰茎

皐月も締めくくられる頃、煮転がされるやうに熱を帯びた夕とも夜ともつかぬ時分であつた。蒲団と敷物は湿り気の虜囚と化し、窓からは朱みを残す空が僅かながらに覗いて居た。此処に来て仮名を山羊牛とか云う病人は全く奔放に見えた。其の眼は在りもしない膣を眺める為に黒く落ち窪み、其の掌は只管に一寸程の間隔で上下する事を我が宿命と心得ていた。哀れなのは絶え間なく紡ぐ無意味な定義の数々である。

 

「さて凡そ女子の子宮と云う物は、俺が視るにせよ視ないにせよ其処に在るのだ。故に、只子宮こそが確かに存在する事象である。他の尽くは幻想では無いか」

 

陰鬱な蛆が人の皮を被ったが如く、女体への執着には人並み外れた物を持つたが、さりとて其れ以外に持ち合わせることもない一介の病人である。かやうな戯言を吐くのを能の一つと数えても良いものか否かと考えあぐねては、またこの蒲団へ戻ると云つた蠢きを続けて六千日を少し越えた。陽の光と重力、其れに己の筋細胞の動作が最も忌み嫌う所であつた。

 

今日も己に馴染む淫猥を此れ又己の中から掘り返そうとする。まるで或る一定の摩擦運動こそが自らの呼吸であると妄信するかのようである。病人の体に何が巡り回つているのかは当人ですら定かで無い。さうこうしながらも摩擦運動は或る区切りを迎え、世には新たな生と無数の死が蔓延り、この狭い間に生無くして数え切れぬ死が出で来る、その死を糧として病人が生きる。

 

唯でさえ歪曲した輪廻はグロテスクなまでに此処に顕現していると言えやう。病人は只存在せぬ場所に病原的な破滅を繰り出しては、最早動かない足を猫に喰われて死ぬと見えて、衆目に晒される事も無く猥褻に身を沈めるばかりである。

 

助兵衛かと問へばまたさうでもない。助兵衛と云うのはインモラルでありながらどこか実直な、猥褻とは趣を異にした人型である。卑猥に卑しきと云う字を当てた事由に然り、ただ性的に歩を奥深く進めるのでは餓鬼の如き醜い言を吐くには至らない。未だ見ぬ性に思いを馳せ、洋灯にも似た輝きを瞳に宿す少年の無垢な事と云っては、放逸した架空の女体に自らを啜らせた病人とは幾百里もの開きが在る。

 

「あゝ、顔であらう、どうせお前も、お前も顔に射精をするのだらう、嘘吐きめ、裏切り者め」

 

かくして微かに残つていた朱も見捨てるやうに空から去り、病人は只穢らわしくも独り淫らである。

 

 

 

 

 

近頃は落ち着いて射精もできねえですね 頑張っていきましょう 然るべき時にゆっくりと精液を押し出せるようにね